初春級駆逐艦 作例の工作について

・組み立て前処理

キャスティングによるレジン製キットです。修正などの表面処理や洗浄があらかじめ必要です。

 キットを素組みしたものです。
 湯口及び気泡抜きゲート部の切り取りやパーティングライン等の表面の修正を済ませた後で
 洗浄を行います。
 レジン洗浄用の溶剤も市販されていますが作例では台所洗剤の「クリームクレンザー」と
 歯ブラシ「システマ」を使いました。
 新品の歯ブラシを使い細かく泡立てるように洗っています。
 洗浄、水洗い後はよく乾燥させますが部品の流失、紛失には注意してください。
 乾燥させた後、角部やディティール部分などに残る気泡を修正します。(作例ではエポキシ
 パテと瞬着を使い分けています)また、部品類を仮組みして取り合いを確認しておきます。
 以上が組み立て前処理となります。


・上構の追加工
 左:型抜きの都合で省略した吸気筒先端をプラ材で
 作ります。(艦型図などを参考にして下さい)

 右:機械室通風筒部品の取り付け位置です。
 固定後、通風筒天面を削り2m測距儀台と同じ高さに
 そろえてください。
 また、舷窓類の彫込みにはφ0.5mmを使用しています。


 左:手前が有明用の船体です。
 船首楼甲板の後端を2.1mm短縮、その結果狭くなった
 上甲板幅にあわせて舷側平面部を削り込みます。
 平面後端の波よけ部分はプラ板で作り直しました。

 右:艦橋左舷後端の烹炊所吸気筒頂部にH形煙突の
 取付け穴(φ0.5〜0.6)を加工して下さい。
 写真の艦橋は塗装済みです。
 窓枠は細筆で塗装しています。

・組み立てと金属線による追加工
 左:金属線による追加工です。
 蒸気捨管はφ0.5mmの真鍮線、煙管通風筒は外径φ0.8mmの
 真鍮パイプを使用していますが、曲げやすい様にあらかじめ
 焼きなましをしています。
 形状や取り合いは艦型図を参考にして現物合わせをして下さい。
 また、この前に塗装、各上構部品の接着を済ませておきます。
 作例では缶入りレジン・サーフェイサーを薄く吹きつけた後、クレオス
 ラッカー系カラーで調色した外舷色をエアブラシし基本色としました。
 リノリウム他、各色はタミヤエナメルを重ね塗りしています。
 ラッカーに上塗りしたエナメル塗膜は脆弱で簡単に擦れてしまうため、
 後々補修塗りを続けることになります。
 甲板塗装および細部塗装にはもタミヤエナメルを筆塗りしています。


・金属製自作部品等の取付け
 砲塔、発射管の取り付け穴が必要な場合は加工しておきます。材質が柔らかいので位置ズレに注意して下さい。

 別途、製作しておいた各部品を取り付けます。艦橋とマスト、機銃座支柱などは慎重に取り合いを確認して取り付けて下さい。
 マスト類は付属参考図の状態までハンダ付けで作り、船体上に固定後伸ばしランナーの横梁を接着しました。
 艦橋はマスト類の位置決めが済むまで仮止めにしておきます。

 マスト類の取り付けには瞬着を使いましたが船体側に0.5mm程度の深さで取り付け穴も加工しています。
 仮組みで位置を決めマークしてからφ0.4mmで揉みつけました。この場合、真鍮線も穴の深さ分だけあらかじめ長めにしておく
 必要があります。取り付け穴を加工しないで瞬着で直接イモ付けする方法もあると思います。
 取り付け強度は大差ないでしょうがどちらが容易かは判断しかねます。

 スキッドビ−ムも゛ひねり面゜をつくらなければならないため真鍮線を使いました。角断面に削ったものをハンダ付けし曲げ等の整形
 を加えています。  ⇒基本工作・駆逐艦編

 初春級の前後の煙突は取り付け角度が違います。後方への傾き角度が『前部煙突16度 後部煙突11度』となっていました。
 また、後部煙突は取り付け位置や向きが独特ですので注意してください。
 煙突右側面が艦首尾線と平行、左側面が予備魚雷格納箱と平行になります。付属艦型図も参考にしてください。

 奥の初霜と手前の有明での主マスト支柱取り付け
 位置の違いです。
 初春級初霜は船首楼甲板、改初春級有明は上甲板
 に取り付けます。
 初春級各艦も実艦は上甲板に固定されていました。
 キットで取り付けた箇所は実際は張り出しで支柱は
 そこを貫通しています。
奥が有明、手前が初霜です。初霜の第3缶室通気筒が
機銃座細径支柱に寄り添った形の煙管(キセル)管に
なっています。
この形式は「初春」「子日」「初霜」の3隻で終わり、以後
の駆逐艦は太くなった支柱パイプが通気筒をかねる構造
になりました。
この煙管筒もφ0.8mm真鍮パイプを現物合わせで曲げて
製作しています。

 左:初霜の右舷側、各種煙管筒等です。

 右:烹炊所吸気筒頂部へ烹炊所煙突を取り付けた
 状態です。
 実艦ではH型煙突(排気筒)を吸気筒が包む形で
 一体となり、天窓上に取り付けられていました。
 烹炊設備が石炭式から重油バーナー式に改良された
 艦は皆こういった形式になっています。
 また初春級は士官用と下士官、兵用の烹炊設備が
 背中合わせに設置されていたため吸排気筒が一本で
 済んでいます。

 艦首錨甲板です。作例ではレース糸を利用して錨鎖を自作、錨鎖管開口部をφ0.5mmで
 加工し瞬着で固定しています。⇒基本工作・駆逐艦編
 駆逐艦などの単キャプスタンの艦は通常片側の錨を使用していたとされ作例は右舷の錨
 を常用している設定です。
 この場合、左舷の錨鎖はライジングビットを半周巻いて左錨鎖管へ、右舷の錨鎖はライジング
 ビットに添わせた後キャプスタンで巻き上げ、右錨鎖管へ収めています。
 錨鎖管の開口などの追加工には付属艦型図や実艦写真を参考にして下さい。

 市販のエッチングパーツや削ぎ採ったインジェクションパーツなどを利用する方法もあります。
 使用する材質、部品にあわせて省略や追加工を行ってください。
 
・流用部品等の取付け
  各部の塗装後、流用部品等の艤装品を取り付けます。
 金属部品はメタルプライマの下地塗り後、基本色のラッカー系クレオスカラーを調色した外舷色を筆塗りしました。

 3m及び2m測距儀、毘式40mm機銃、連装及び三連装25mm機銃、砲塔、発射管、探照燈、魚雷積み込みダビットは
 ピットロード社製、カッター、内火艇、ラッフィングダビットは静岡3社製小艦艇用部品セットから流用しています。
 また上記以外に縦舵機調整台、探照燈管制器及び前述の見張所をプラ材で自作しました。

 「有明」昭和15年頃の艦影です。前部煙突の4番隊
 表記はフィクションです。
 「初霜」昭和18年頃の艦影です。

 艦橋部分2種です。
 「初春」「子日」でブルワークの張り出しに置かれていた従羅針儀?が「若葉」「初霜」で艦橋の窓の中に入り、
 「有明」「夕暮」でまた元に戻りました。
 これが羅針艦橋の窓のある部分の幅の違いになっています。
 左:「有明」を製作した場合の問題点、信号旗甲板と
 マスト主支柱の隙間ができています。修正する場合は
 信号旗甲板を作り直す必要があります。

 右:艦載艇は船型を削り込んで使用しています。 
  ⇒基本工作・駆逐艦編  

 左:後部セルター甲板(後部甲板室天蓋)には縦舵機
 調整台をそれらしくプラ材で自作、取り付けました。
 2m測距儀は支柱下部を切断し全高を低めて使用して
 います。

 右:「若葉」「初霜」の後部煙突横の細管は上甲板の
 鍛造工場に置かれていたアセチレン炉の煙突です。
 他艦も煙突が目立たないだけで同様の設備が有った
 ものと思われます。
 また、機銃は各部を切り詰め縮小して使っています。

 以上で初春級駆逐艦工作の作例を使った解説を終わります。
 ここでは所謂「旧来からの方法」でまとめ、エッチングパーツなどを使う「最近流行の方法」には触れませんでした。
 現在、多種多様のエッチングパーツなど補用部品が市販されています。上手に活用すれば効果的なものだと思いますが材質上、
 オーバースケールの補正などの寸法修正が難しいので‘出来なりをそのまま使える部分’を探すことになると思います。
 それらの使い方は専門誌を参考にして下さい。

 個人的には洋上模型(特に駆逐艦などの高速小艦艇)はシルエットの軽快さが命と考えています。構成する各面の角部の
 シャープさや平面度を生かし、デティールアップする場合も‘見た目の風圧面積’が巨大にならないことを心がけています。
 時代の流れに逆行しているような気もするのですが。
 ハシゴやラッタル、艦尾信号燈など使ってみたいものは色々有ります。支柱ピッチが場所によって違ってしまうハンドレール
 はともかくオーバースケールにならない程度の使いまわしのできるものを市販してほしいと思います。